2006年11号
治療後の「後戻り」は、なぜ起こる?

動的治療が終わった後、後戻りが起きやすいのは大きく2つの理由があります。

●理由1:あごの骨は、固まるまでに時間がかかるため

歯の移動歯の移動は、歯を支えている部分のあごの骨が溶けたり新しくできたりして起こるもの。そして歯の移動が終わった後も、歯の周囲の骨やあごの関節はかつてからの環境・遺伝の影響を受け続けています。そのため、歯や骨が安定することはなく、保定処置をどんなにうまく使用しても、6〜10%の人には抑えが効かず、不安定な咬み合わせになることが。それでも、ほかにいい方法がないため、リテーナーでの固定や長期使用が重要になるのです。

●理由2:歯の根っこに、元に戻ろうとする力が働いているため

歯の根っこ同士は、何本もの細い糸(歯周組織の線維)で結ばれています。特に、デコボコにねじれた歯を並べ直した場合などは、この細い糸が伸ばされた状態。伸びた糸はもとに戻ろうとするため、後戻りが起きることになるのです。特に、下の前歯はまわりの骨が薄いため、たとえ新しくできた骨が安定しても、糸が戻ろうとする力のほうが勝ってしまい、後戻りが起きやすくなります。

● 理由3:筋肉や舌の力が歯を動かす場合があるため

安静にしているときや、話したり食べたり、クセで口を動かしているときなどに、口のまわりの筋肉や舌の力が歯に加わって、歯を動かしてしまうことが。筋肉や舌の動かし方は、矯正歯科治療中にトレーニングを受けますが、治療中にしっかり改善されないと、歯が動いてしまう一因になるので気をつけたいもの。

では、動的治療が終わった後、リテーナーをどれくらいつけていれば後戻りが防げるのでしょう? 長期保定に力を入れている東京歯科大学水道橋病院の矯正歯科を訪ねました。

谷田部賢一先生

谷田部賢一先生

「実は、疫学的な統計では、キレイな歯並びを一生保つのは夢のようなことだと考えられているのが実情なんです」と話すのは、2006年の春まで同病院の副病院長をつとめた、日本矯正歯科学会 終身矯正歯科指導医・谷田部賢一先生

「矯正歯科治療をする・しないに関係なく、歯並びは年齢とともに動き続けます。研究報告によると一生かけて5ミリほど前に出てくると言われていますが、傾向としては上の歯は隙間を開けながら前に出て、下の歯はデコボコになることが多いですね。これはいわゆる加齢変化で、残念ながら矯正治療をしたからといって、この現象を100%食い止めることはできません。しかし、整えた歯並びが悪くなるのを遅らせることはできます。そのための装置がリテーナーなのです」

東京歯科大学の矯正歯科ではそのため、矯正装置がとれてからの6カ月間は食事と歯磨きのとき以外はリテーナーを常用し、それ以降は夜眠るときだけの使用をすすめています。

「よく患者さんからは、リテーナーは一生つけ続けるのか? と質問されます。そんなときはいつも『いいえ、違います。歯がなくなるまでです』と答えるようにしています(笑)。実際、リテーナーの使用は長ければ長いほどいいですね。東京歯科大学の基準は、20〜30年以上のリテーナー使用と、年1〜2回の通院。長いと感じられるかもしれませんが、リテーナーは言うなれば“お口のパジャマ”のようなもの。夜、服を着替えて眠るように、毎日の習慣として長くつきあっていただきたいですね」

検査

保定期間中は年1〜2回、定期的なプロの検査を受ける

ヨガやストレッチで体型を保つのと同じように、歯並びを気にする私たちにとって歯のケアを続けることは、もはや当然。「継続は宝なり」なのです!

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